アイピル(アフターピル)の副作用について
アイピルには高い避妊効果が期待できる一方、副作用があることも知られています。
服用前に、副作用が起こる原因や対処方法について学んでおきましょう。
副作用が起こる理由
アイピルを飲んで副作用が起こるのは、体内のホルモンバランスが急激に変化する為です。
アイピルにはレボノルゲストレルという有効成分が配合されています。
この成分が黄体ホルモンに似た働きをするので、脳に「これ以上ホルモンを分泌する必要はない」と錯覚させ、排卵を妨げることが可能です。
排卵が抑制されると、受精や着床といった工程へ進めなくなる為、妊娠する確率が大幅に低下します。
しかし、外から大量の女性ホルモンを投入し、体内で自然に作り出していた女性ホルモンの分泌を止めることになるので、身体のホルモンバランスは一時的に大きく乱れます。
このホルモンバランスの乱れによって、服用後に様々な副作用が生じるのです。
アイピルの主な副作用
アイピル(レボノルゲストレル)は、主に以下のような副作用が報告されています。
発生頻度の高い症状 | 頭痛、傾眠、消退出血、不正子宮出血、悪心、倦怠感 |
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稀に発生する症状 | 浮動性めまい、体位性めまい、不安、月経過多、下腹部痛、下痢、腹痛、貧血、異常感、口渇、熱感、疲労、末梢性浮腫 |
頻度不明の症状 | 月経遅延、嘔吐、乳房圧痛 |
参考サイト:医療用医薬品「レボノルゲストレル」
また、ホルモンバランスが乱れることから、肌荒れやイラつき、体重変動といった症状を感じる方もいるようです。
重症度については、体質、その日の体調、食事の有無などに影響されるケースがあります。
副作用はいつから始まる?
副作用の発現及び消失までにかかる時間には、個人差があります。
平均では、服用後数時間ほどで体調に何らかの変化を感じる場合が多いようです。
軽い症状なら、一日安静にしていれば徐々に治まるでしょう。
ただし、耐え難い症状に見舞われた場合には、ただちに医療機関を受診してください。
消退出血は、服用後数日~3週間で起こります。
3週間以上が経過しても起こらなかった場合は避妊に失敗している可能性がありますので、専門医に相談しましょう。
服用後の消退出血と、その後の通常周期での生理を確認できた時点で初めて、避妊が成功したと言えます。
副作用がないアフターピルはある?
結論を言えば、「副作用が全くないアフターピル」の開発は難しいでしょう。
アフターピルは体内の女性ホルモンのバランスを変えるお薬です。
そしてホルモンバランスの乱れは、体調不良に繋がります。
生活の中で自然と乱れた場合でも、お薬の力によって一時的に乱れた場合でも、それは変わりません。
ただ、ご自分に合う避妊方法を選ぶことで、副作用のリスクを軽減させられる可能性はあります。
避妊方法と副作用
現在、国内でも広く知られている避妊方法は、以下の3種類です。
- ヤッペ法
- ノルゲストレル(黄体ホルモン)とエチニルエストラジオール(卵胞ホルモン)を有効成分として配合しているお薬を、性行為後72時間以内に2回に分けて計4錠服用する方法。
中用量ピルを使用する。
【例】…プラノバール錠、オブラルGなど。
- レボノルゲストレル法
- レボノルゲストレル(黄体ホルモン)を有効成分として配合しているお薬を、性行為後72時間以内に1錠服用する方法。
ヤッペ法より避妊成功率が高い。
【例】…アイピル、ノルレボなど。
上記のうち、最も副作用による吐き気や嘔吐が起こりやすいのはヤッペ法です。
緊急避妊薬ではなく中用量ピルをまとめて服用する為、身体への負担が大きいのでしょう。
避妊の成功確率も、それほど高くはありません。
レボノルゲストレル法とウリプリスタール法では、どちらも性行為後すぐに飲んだ場合の避妊成功率は9割を超えています。
また、緊急時の避妊を目的に開発されたお薬であることから、副作用も比較的起こりにくくなっているようです。
アイピル服用後の出血について
女性の性器出血には、生理時の経血、女性ホルモンの減少によって起こる消退出血、予期せぬタイミングで起こる不正性器出血などのパターンが考えられます。
アイピル(アフターピル)の服用後に起こる出血は消退出血に該当するものであり、普段の月経と同じか少し短いくらいの期間で治まるでしょう。
一般的に、この場合の消退出血はお薬による避妊が成功した証です。
服用後3週間が経過しても消退出血が確認できなかった場合には、避妊に失敗している可能性がありますので婦人科を受診してください。
また、消退出血が起こったとしても、その後の生理が来なくなったり、生理周期が数ヶ月に渡って著しく乱れたりした場合も、同様に婦人科で相談しましょう。
服用後の影響
アイピルを服用すると、副作用以外にどのような影響が及ぶのでしょうか?
次の生理はどうなる?
アフターピルの服用後は消退出血が起こりますので、そのタイミングによって通常の生理の周期も変わる可能性が高いです。
早まる場合が多いとされていますが、人によっては上記(頻度不明の症状)のように月経遅延が生じる場合も考えられます。
長期間に渡り、経血やおりものに著しい異変が見られた場合には、専門医へご相談ください。
服用後の避妊の必要性
アイピルは直前の性行為に対する頓服薬なので、その後の継続的な避妊効果は期待できません。
また、性感染症の予防効果もありません。
服用後は生理周期も含めて体調が崩れることが多い為、しばらくは性行為を控えることをおすすめします。
体調が戻ってからも引き続き妊娠を希望しない方は、避妊具や低用量ピルの常用をご検討ください。
将来的な妊娠への影響
先述した通り、アイピルには継続的な避妊効果がない為、将来の妊娠には影響しません。
お薬の作用はあくまでも一時的なものです。
服用によって不妊になったり、胎児へ悪影響を及ぼしたりする、といった因果関係はないとされています。
ただし、短期間で何度も服用を繰り返してしまうと、予期せぬトラブルが生じるケースがありますので注意しましょう。
低用量ピルとの比較
お薬の力で望まない妊娠を回避するには、性行為後にアイピルのようなアフターピルを服用する方法の他に、毎日継続して低用量ピルを服用しておく方法があります。
アイピルと低用量ピル、両者の長所を比べてみましょう。
低用量ピルの長所
低用量ピルは、毎日決まった時刻に1回1錠のお薬を飲むことで妊娠しづらい体内環境を作ります。
名前の通り成分の配合量が少ない為、身体への負担も最低限です。
また、飲み始めに多少の副作用があらわれた場合でも、毎日お薬を摂取することで身体が慣れ、徐々に気にならなくなっていきます。
男性が主体となって使用する避妊具とは異なり、こちらは女性主体で実践できる確実性の高い避妊方法です。
アイピルの長所
アフターピルであるアイピル(レボノルゲストレル)、低用量ピルであるマーベロン、超低用量ピルであるヤーズを比較した場合、起こり得る副作用の報告例が最も少ないのはアイピルです。
精神神経系、生殖器、消化器、血液などにまるわる副作用は生じやすいものの、低用量ピルよりも限定的な範囲での症状に絞られます。
また、低用量ピルの服用にあたって最も注意しなければならない血栓症も、アイピルではほとんど起こりません。
血栓症のリスクを高める黄体ホルモンが配合されていない為です。
ただし、血液を固めやすくする作用を持っているので、水分の摂取量が十分でなかったり、喫煙していたりすると稀に血栓症を引き起こすことがあるのでご注意ください。
参考:医療用医薬品「レボノルゲストレル」
参考:医療用医薬品「マーベロン」
参考:医療用医薬品「ヤーズ配合錠」
副作用を軽くする方法
服用後は様々な副作用が生じる可能性を考慮し、予め各症状を緩和させられるお薬を用意しておくと安心です。
胃薬、吐き気止め、頭痛薬など、アイピルとの飲み合わせを確認した上で一緒に購入することをおすすめします。
症状ごとの対処方法
胃痛や吐き気については、お薬を食後に服用することで緩和できる場合があります。
元々、アイピルの摂取に時間帯の制限はありませんが、他のお薬と同じく空腹時の摂取によって消化管へ強い刺激を与えるケースが考えられますので、体調に余裕があれば軽い食事を摂ってから服用すると良いでしょう。
眠気が強い場合には、少量であればカフェインの摂取も問題ないとされています。
ただし、多量に摂取すると、自律神経の乱れから更なる不調へ繋がる恐れもある為、注意が必要です。
また、お薬の服用時は必ず水やぬるま湯と一緒に飲んでください。