EDとは?
EDは、男性の身体に起こる性機能障害の一種です。
「Erectile Dysfunction」の略称で、日本語では勃起不全や勃起障害などと訳されます。
多くの方は完全に勃起しないことをEDだと認識していますが、実は該当する症状はそれだけではありません。
しっかりと勃起するまでに時間がかかる、挿入するのに十分な硬度を保てない、挿入はできるが途中で萎えてしまうといった症状から、自分やパートナーが納得のいく性行為を行えない状態が続いた場合、EDを発症している可能性が高いです。
日本性機能学会及び日本泌尿器科学会によると、EDの定義は「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」とされています。
「満足な性行為」の可否が判断材料の一つなので、自慰行為は問題なくできるが性行為になると上手く勃起しないというケースもEDに含まれます。
医療や医薬品開発の進展が目覚ましい昨今において、EDはほとんどの場合で改善が見込める疾患です。
ご自身に合う適切な処置を施し、充実したナイトライフを送る為にも、まずはEDに関する正しい知識を身に付けることから始めましょう。
参考資料:ED診療ガイドライン〔第3版〕
ED発症のメカニズム
先述した通り、EDとはご自身の思うタイミングで勃起できなくなる症状を指します。
では、一体どのようなメカニズムで発症するのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
「勃起する」とはどのような状態か?
内側に骨が存在しない器官である陰茎が硬く勃起する為には、勃起組織の一つである陰茎海綿体に十分な量の血液を流し込む作業が必要です。
通常、男性が身体に直接または、五感で間接的に性の刺激を感じると、脳の中枢神経が興奮を覚え、その情報を脊髄神経を通して陰茎へと伝えます。
すると次に、情報を受け取った陰茎内部で一酸化窒素が放出され、更にその一酸化窒素がサイクリックGMP(細胞間の情報を運ぶ伝達物質)を産生します。
このサイクリックGMPが陰茎海綿体の血管平滑筋(収縮や弛緩により血圧を制御する筋肉)を弛緩させる働きを持っている為、濃度が高まることで陰茎周辺の血管が拡張されて流れ込む血液の量が増加し、正常な勃起へと繋がるのです。
「勃起できない」とはどのような状態か?
陰茎海綿体の血管平滑筋内部では、常にPDE5(ホスホジエステラーゼ5型)が活動しています。
PDE5はサイクリックGMPを破壊し、拡張した血管を元に戻すことで勃起状態を鎮める分解酵素です。
日常生活において意図せず勝手に勃起状態になってしまったり、射精したにも関わらず勃起状態が治まらなくなってしまったりすることのないように管理する役割を担っています。
つまり男性の性機能は、性行為時にはサイクリックGMPが優位な状態となって勃起を促し、射精後にはPDE5が優位な状態となって必要以上の過剰な反応を抑制する、というバランスで成り立っているのです。
何らかの理由でこのバランスが崩れ、性行為時にもPDE5が優位な状態ができてしまうと、興奮の度合いに関係なく陰茎は勃起することができなくなります。
それがEDと呼ばれる症状です。
症状の種類
一口にEDと言っても、症状の種類や原因は人それぞれです。
どのようなものがあるのか、その一例をご紹介します。
器質性ED
動脈硬化の進行または、神経の物理的な損傷が原因でEDを発症するパターンです。
動脈硬化は、生活習慣の乱れや加齢による身体機能の衰えなどで血管が硬くなった状態であり、血液の循環が滞った結果、生活習慣病や心筋梗塞といった命にかかわる疾患を引き起こす可能性があります。
そして血液の循環が滞ることは、先述した通り男性の性機能にとっても致命傷です。
また、高コレステロール、高血圧、高血糖といった状態が長く続くと、血液がドロドロになって流れにくくなってしまいます。
健康診断で数値を指摘された経験のある方は注意が必要です。
その他、事故による怪我や外科手術等で血管や神経が損傷し、EDに陥るケースもあります。
外的要因によって神経障害を起こしてしまい、脳から陰茎への情報伝達がスムーズに遂行されなくなってしまうのです。
特に、膀胱がんや前立腺がんなどの陰茎周辺の手術は、陰茎海綿体へ血液を集める重要な血管を傷付けてしまう可能性が高く、手術後に勃起できなくなってしまったという事例もあります。
重大な手術を行う際は、勃起機能を損なわない為にも、神経や血管をできる限り傷付けずに残す手法を用いるよう担当医と十分な話し合いを行いましょう。
心因性ED
身体機能に問題が生じる器質性EDに対して、精神的な問題から発症するパターンが心因性EDです。
心因性は原因の根本を探ると2種類のケースがあることが分かります。
1つめは、現実心因です。
性行為への過度な緊張や不安、日常生活を送る中で蓄積されたストレス、自身のコンプレックスなどの要素から男性ホルモンの分泌量が減少し、性機能が低下することで勃起が難しくなってしまいます。
また、集中力も低下すると言われており、行為に集中できずに中折れしてしまうケースもあるようです。
2つめは、深層心因です。
こちらは日常的な出来事よりも更に深く根差した心の問題であり、性的趣向(LGBTなど)や精神疾患(うつ病や不安神経症など)、性行為への嫌悪感、過去のトラウマなどの要素が挙げられます。
自身では自覚できないことも多く、原因が分からないまま性行為の失敗が重なった結果、EDの症状を悪化させてしまう悪循環を引き起こす恐れもあります。
薬剤性ED
名前の通り、特定の薬剤を服用または、使用した際に発症するパターンです。
医薬品に配合されている薬用成分は、そのほとんどが何らかの副作用を起こす危険性を持ち合わせています。
成分が身体に合わなかったり、他に常用している医薬品との相性が悪かったりした場合に、副作用として性機能の低下を招いてしまうケースがあるのです。
以下は、EDを招く恐れのある医薬品の一例です。
中枢神経に作用する薬 | 向精神薬、抗けいれん薬、抗うつ剤、解熱、消炎鎮痛剤、抗精神病薬 |
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消化器官に作用する薬 | 抗コリン薬、鎮ケイ薬、消化性潰瘍治療薬 |
抹消神経に作用する薬 | 抗コリン薬、鎮ケイ薬 |
循環器系に作用する薬 | 脂質異常症治療薬、降圧剤、血管拡張剤、利尿剤、不整脈治療薬 |
ただし、医薬品ではなく治療したい疾患が原因で性機能が低下している可能性や、心身の不調が絡み合った末にEDを発症してしまっている可能性も考えられますので、一概に「この薬剤が原因である」と断定するのは難しいとも言われています。
詳細はかかりつけの医師へご相談下さい。
混合性ED
器質性、心因性、薬剤性のどれか、あるいは全ての要素が組み合わさることでEDを発症するパターンです。
実は、上記いずれかの単独で発症するケースよりも、様々な要素が絡んだ混合性EDとして発症するケースの方が多いとされています。
原因の特定や治療のプロセスが複雑になる為、根気強く向き合うことが大切です。
妻だけED
稀に、特定の相手に対してのみEDを発症するパターンがあります。
昨今、妻以外の女性とは問題なく性行為ができるのに、妻とだけはどうしてもできないと悩む男性が増えているようです。
長年連れ添うことでマンネリ化して興奮しなくなった、出産してから母親としての認識が強くなり女性としての魅力を感じなくなった、相手があまり協力的ではないといった理由から脳が興奮を覚えなくなると、比例して性機能も麻痺するようになってしまいます。
EDの治療方法
パートナーを愛する気持ちはあるのに満足のいく性行為ができない状況は、自分にとっても相手にとっても悲しいものです。
最悪の場合、パートナーとの関係に亀裂が生じてしまう可能性もあります。
そのような事態を防ぐ為にも、原因の特定と治療に前向きに取り組む姿勢が大切です。
生活習慣の改善
偏った食事、アルコールの過剰摂取、肥満体型、運動不足、高血糖など、日常に潜む危険因子を取り除くことで動脈硬化や生活習慣病のリスクを引き下げる方法です。
器質性EDの症状改善はもちろん、健康な身体作りができれば強い医薬品を常用する必要性も薄まりますので、薬剤性EDを発症する可能性も低下します。
間食やアルコールを控え、毎日適度な運動を生活に取り入れると効果的です。
食生活の改善を目指す際は、一日3食のバランスの良い食事に加えて、魚や海藻、野菜、豆類などを積極的に摂取するよう心がけると良いでしょう。
血液がサラサラになる為、血流改善に効果が期待できます。
また、亜鉛やビタミンBを多く含んでいる牡蠣やうなぎなどの食材は、精子の生成を促す効果があるのでおすすめです。
心理療法
カウンセリングや暗示療法、行動療法、催眠療法などを用いて患者の心に心理学的なアプローチを試みる治療方法です。
ED治療の専門医や心療内科の医師による問診などを、時間をかけて繰り返し行いながら原因の追及や改善を進めます。
心理療法は、他の方法では十分な改善が見られない患者に対して行うものとされており、心因性EDの症状改善に効果的です。
自身で原因の特定が可能な現実心因によって発症している心因性EDまたは、妻だけEDの場合には、専門の医療機関を受診しなくともパートナーとの話し合いで解決できる場合があります。
精神的な問題を自分独りで抱え込まず、心を許せる相手に打ち明け受け止めてもらうことで、パートナーとの絆がより深まると同時に自然と症状が改善されていくのです。
普段から、パートナーとのコミュニケーションは大切にしましょう。
ED治療薬
上記の方法で十分な効果が得られなかった場合には、医薬品の力を借りるのも有効な手段です。
特に、過去の性行為の失敗がトラウマとなってEDを発症している方は、体験の上書きにより症状の再発を防ぐことができるかもしれません。
現在流通しているED治療薬の多くは、PDE5阻害薬に分類される医薬品です。
勃起の妨げとなる酵素PDE5の働きを阻害し、血管拡張を促して陰茎海綿体への血液の流入をサポートします。
厚生労働省から認可されている商品であれば医療機関にて処方してもらうことも可能ですが、そうでない医薬品を試したい場合は個人輸入という形で取り寄せる必要があります。
しかし、医師からの解説や処方せんが受け取れない海外医薬品の通販には、偽造品を送られるリスクや、正規品であっても服用方法を間違えて健康被害に繋がってしまう恐れもある為、慎重に検討してください。
参考:厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」
代表的なED治療薬
お薬ラボで取り扱っている代表的なED治療薬をご紹介します。
有効成分は違うものの、全てPDE5阻害薬に該当する医薬品です。
特徴やコストパフォーマンスなどを比較し、ご自身に合うものを探してみてください。
バイアグラ
シルデナフィルが配合された世界初のED治療薬です。その確かな勃起力からED治療薬の中でも不動の人気を獲得しています。また、人気のジェネリック医薬品であるカマグラゴールドなどの種類も豊富なので併せてご確認ください。
シアリス
有効成分としてタダラフィルが配合されたED治療薬です。最長で36時間に及ぶ効果の持続時間の長さが特徴であり、1度服用すれば週末を楽しめる「ウィークエンドピル」の愛称でも親しまれています。
レビトラ
バルデナフィルを配合したED治療薬です。他の有効成分よりも水に溶けやすい性質を持っている為、即効性の高さに定評があります。早い方では服用後15分程度で効果を実感できるようです。
ステンドラ
アバナフィルを有効成分とするED治療薬です。バイアグラの強い勃起力、シアリスの持続力、レビトラの即効性を兼ね備えていることから「第4のED治療薬」と呼ばれています。
ザイデナジェネリック
ウデナフィルが配合されたED治療薬ザイデナのジェネリック医薬品です。これまでのED治療薬は全て欧米で開発されたものですが、ザイデナは初めて韓国で開発された商品になります。