ノルバデックス-D

ノルバデックス（タモキシフェン）は乳癌治療剤です。女性ホルモンの変化によって発症する疾患として乳癌が近年増加しており、年齢が高いほど発症率が上昇しています。特に30代を超えると高くなり、女性特有の病気の中でも治療が大変と言われています。ノルバデックスはこの辛い乳癌の治療を少しでも軽くする画期的な薬として、1981年にアストラゼネカ社から発売されました。特徴としてはエストロゲンという女性ホルモンが乳癌組織に結びつくのを阻害し、エストロゲンが働かないようにします。抗癌剤の分類ですが、癌を攻撃し退治するような作用はなく、ホルモンを介して癌を小さくする薬です。また、同薬は非ステロイド性ということも良い特性の一つです。副作用も抗がん剤と比べて少ないという利点があり、現在乳癌治療に積極的に処方されています。

・乳癌治療の場合
一日に20mgを目安に1～2回服用してください。進行レベルによって使用量を増やすこともありますが、最高量である40mg以上の摂取はしないようにしましょう。投与期間としては、乳癌の場合は5年以上を基準としており、病気の進み具合や医師の方針によって違いがあります。

・不妊治療の場合
月経周期の3日目～毎日5日間飲む必要があります。1回飲んだだけでもしっかりとした効き目を得ることができるほど作用時間が長い特性があり、具体的には半減期が大体15～33時間もあります。半減期とは、血液中の薬の濃度が半分になるまの経過時間の事で、作用時間の基準になる値です。食事によって効果が薄くなることがないため、食前食後など時間を気にせず服薬することが可能です。不妊治療を目的とした排卵誘発剤として使用する際は、月経周期の3日目～5日間に飲むことが有効的です。治療中の卵胞の状態は変化しやすいので確認しながら薬の使用量を変えることもあります。

ノルバデックスは乳癌治療だけではなく、排卵を誘発することによって不妊症治療や男性の筋肉増強ホルモン剤使用による女性化乳房にも効果を発揮します。乳癌は癌細胞であるエストロゲン受容体にエストロゲンが結ばれて、癌細胞が大きくなります。このお薬は実際にエストロゲン受容体に有効成分タモキシフェンが結ばれる事によって、エストロゲンがエストロゲン受容体にくっつけなくなります。こうしてエストロゲンが作用できなくなり、癌細胞が大きくなることを防いでくれます。不妊治療に使われる場合は、このエストロゲンが作用できなくなる仕組みを利用します。つまり、エストロゲン分泌は脳からの指令によって行われますが、エストロゲンが作用できない為に指令が遮断されてしまうと、身体の方がホルモン不足と思い込み、逆にエストロゲンを分泌するようになるのです。この結果、排卵を施して受精しやすくなるのです。

副作用としては女性ホルモン低下によってほてりや多汗、嘔吐や体重増加があります。重い症状では無顆粒球症や白血球減少、貧血や血小板減少、視力視覚障害や血栓塞栓症などの報告があります。ノルバデックスは女性ホルモンに作用する為、稀に子宮体癌や子宮内膜症が生じたり生理不順になることがあります。また、血液が固まりやすくなる為、体質によっては血栓症が見られることがあります。手足にしびれや痛みを感じたらすぐに医師に相談しましょう。

ノルバデックスを妊娠中に服用することは、生まれた赤ちゃんに先天性異常（生まれながらの障害）が残ったり、早期流産するといった報告があるため禁忌です。妊娠中は胎児の為に自然なホルモン変化が必要です。ノルバテックスによるエストロゲンの増加が、胎児を育む大切なプロセスを崩すことになってしまうので、大変危険です。特に妊娠を希望してノルバデックスを服用する場合には、こまめに妊娠検査することが必要です。

ノルバデックスは飲み合わせの悪いお薬があります。
抗うつ剤（三環系抗うつ剤）、向精神薬、循環器薬、抗感染症薬、H1及びH2阻害薬などは併用禁忌となっております。他に、医師から処方されるお薬や市販薬を服用されている方はかかりつけの医師や専門医に相談しましょう。

保管方法は乳幼児や小児の手が届かない、日光や高温、湿気を避けた場所に置くようにしてください。残った薬は捨ててください。

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